不動産の相続で大事なポイントは?
遺産分割の方法の一つ「代償分割」とは?
【相談者A】
先生、こんにちは。実は父が高齢になり、将来的に有料老人ホームへ入居する話が出ています。この先、父が亡くなった際に実家の土地・建物の相続について心得ておくべきことはありますか? ちなみに、母は3年前に他界しています。
【弁護士】
お父さま名義のご実家(土地・建物)があるということですね。不動産に関する遺産は、状況によりトラブルに発展する可能性もあるので、事前に情報を整理しておくのはオススメです。Aさんは何人兄弟ですか?
【相談者A】
都内に住む弟と2人兄弟です。
【弁護士】
原則として、親の遺産はご兄弟で均等に分割します。ご兄弟お2人ですので、相続分は2分の1ずつとなりますね。その中で土地や建物については預貯金と違い、単純に分割することが難しい財産です。
【相談者A】
私はいずれ「実家に住んでも良いな」と考えています。今の家も同じ横浜市内ですが、実家の周辺は自然が多くて住みやすいんですよ。私が将来的に実家(土地・建物)へ住み、そのまま相続した場合、遺産の分割はどのようになりますか?
【弁護士】
ご実家の土地・建物の他に現金や預貯金、株式などの有価証券があるかどうか、弟様も不動産の取得を希望するかどうかにより、考え方が変わってきます。
もし、弟様に土地・建物を取得したいという希望がなく、その他にも十分な財産がある場合には、Aさんが土地・建物を取得し、弟様は他の相続財産から相続分である2分の1の財産を取得すればいいということになります。
【相談者A】
なるほど〜。
【弁護士】
しかし、土地・建物以外の財産がない場合は厄介なことになります。Aさんが土地・建物を取得したとすれば、弟様に代償金を支払うことになります。これは「代償分割」による遺産分割です。
特定の相続人が土地・建物などの(現物の)財産を相続する代わりに、他の相続人に現金などを支払い分割する方法です。Aさんのケースですと、<ご実家の土地や建物を評価してもらい価格が決まり、Aさんが土地・建物を相続する代わりに、弟様が相続分に見合う現金を得る>という形です。
【相談者A】
ありがとうございます。理解できました。いずれにしても、私が実家に住みたいと思っていることなど、一度父や弟と話した方が良さそうですね。弟とはどちらかといえば仲が良い方ですが、こういったことで気まずくなるのは避けたいです。
遺言書の大切さについて
はい。予めお互いの意思を確認しておけば、弟様も安心だと思いますよ。ただ、代償分割をする上で大切なことは、土地・建物を取得する方に、代償金を支払う余裕があるかどうか、という点です。土地や建物の評価額が出たとしても、その半分を支払う財産が必要ですからね。残念ながら財産がない場合は、ご実家の土地・建物を共有として、お二人で使用方法を協議するか、または売却してしまい、その金額をご兄弟で分割する方法になります。
【相談者A】
私がその時点で実家に住んでいた場合でも、家を出なければいけなくなる可能性があるのですね。正直なところ父の財産(預貯金)については把握していないので、この辺りも含め父と弟と話す場を設けたいと思います。父はつい最近、「そろそろ遺言書を準備するか」なんて話していましたし。こういった話はつい先延ばししがちですが、良い機会かもしれません。
【弁護士】
そうですね。相続が発生すると、残された相続人は遺産を分けるため、「遺産分割協議」をおこなう必要があります。しかし、その話し合いの際に揉めてしまい、裁判所による調停や審判、訴訟に発展してしまうケースもあるんです。
それを防ぐためにも、相続に関する意思を示す遺言書の存在は、とても重要です。遺言書があれば、「遺産分割協議」を経ることなく、遺言のとおりに遺産が分けられるので、争いを無くす効果があります。ご兄弟の相続分に配慮し、代償金の準備をどうするかというところも視野に入れて、一度、お父さまや弟様とお話しできたら良いですね。
相続対策をするときは、相続税法および相続法に精通した税理士や弁護士、司法書士に相談しましょう。オーケストライフには、士業グループLTRのメンバーが所属しています。ご質問、ご相談などがありましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。