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耳より情報
2024年07月16日 [耳より情報]

不動産アドバイザーが解説! 土地の「境界立会い」とは?

オーケストライフでは、皆さまのお役に立てるくらしや住まいの耳より情報を定期的に発信していきます。今回は、地域の頼れる不動産アドバイザー トラストバンク株式会社の齋藤 健児が「不動産アドバイザーが解説! 土地の『境界立会い』とは?」と題して、お話しします。



先日、以前よりお付き合いのあるお客さま(Aさん)から、「ちょっと、齋藤さんにご相談したいことが……」と連絡がありました。話を聞いてみたところ、『両親が80代になり、高齢者マンションへ引っ越しをすることになった。このたび土地の売却が決まったので、測量をするため、隣地の方に境界線の立会いを依頼することに! しかし、連絡が取れない人がいる。どうすれば良いか?』という内容でした。

さっそく、Aさんと私(トラストバンク齋藤)の会話をもとに、今回の事例をご紹介していきます。
※プライバシー保護の為、お客様情報の一部の表現を変更させて頂いております。

Aさん:土地を売買するには、隣地の方に依頼し、境界線の立会いが必要になるんですね。



私:はい。土地には「境界」があります。土地の売却をする売買、相続、贈与など持ち主が変更になる場合、境界がかかわってきます。その土地に、境界をはっきりと示す標識(しるし)があるかどうかが重要です。
たとえば自宅と隣家との境界を示す杭がなかったり、せっかくあった杭が前の場所から動いていたら・・・場合によっては境界をめぐるトラブルの原因ともなりかねません。境界杭等がすでに設置されていたとしても、その境界について、関係者同士でお互いの境界として認識しているかの確認が必要となります。そういった意味でも、境界線の立会いは非常に重要な意味をもちます。



※境界についてもっと知りたい方は、下記サイトを参考になさってください。
参考:日本土地家屋調査士会連合会ホームページ『知って得する、境界標の「知識」』



Aさん:両親は、隣地の方へ境界の立会いを依頼するために動いていましたが、左隣は以前から空き家になっていて全く連絡がとれないと……。(両親は)2人ともあまり社交的ではないので、周囲から情報を得られることもなく、私も困り果てています。



私:昔に比べると近所付き合い自体が希薄になっていますし、こういった状況でお困りの方は多いんですよ。隣地の方の居場所が不明な際、不動産登記等を調べて住所を確認する方法があります。


Aさん:なるほど! それで、現在の連絡先が分かるということですね。


私:いいえ。残念ながら、そこに表記されているのが現住所とは限らないんです。


Aさん:えっ、そうなんですか?


私:法改正により、2026年4月1日からは住所変更登記と氏名変更登記が義務化されますが、現在は任意となっています。そのため、登記等を確認しても最新の住所になっていない可能性があるんです。


Aさん:すでに不動産の売買契約は進んでいるようなので、連絡が取れないと困ります。どうすればいいんでしょうか?




私:まずは、確認できた住所に連絡(郵送物送付等)をしてみましょう。並行して、近隣の方をあたり、現在の状況を知っている方がいないか確認してみることもおススメします。



Aさん:それでも連絡が取れない場合は?


私:「筆界特定制度」という制度を利用する方法があります。これは、筆界特定登記官が、民間の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ、現地で土地の筆界位置を特定する制度です。



※「筆界」とは:法務局に登記されたとき、土地の範囲を区画するものとして定める公法上の境界のことです。

Aさん:なんだか大変そうですね……。


私:まずは、土地の所在地を管轄する法務局(または地方法務局)の筆界特定登記官に対して、申請書や必要書類を提出します。そこからあらゆる調査が始まりますが、ある程度の時間(状況にもよるが1年目安)と費用が必要になりますね。


Aさん:そんなに時間がかかるんですね。もしかすると、その間に不動産の価値も下がってしまう可能性が?


私:はい。どうしても、それは避けられないでしょう。この制度を利用したことは履歴として登記簿に残るので、買主の立場からみると、それが土地を買う上で不安材料になるとも言えます。そういう意味でも、この制度を使用するのは“最終手段”にしたいところですね。


Aさん:ありがとうございます。いろいろと理解できました! まずは、登記簿等で確認した住所に連絡し、並行して近隣の方にも情報を得られるよう動いてみます。




今回のAさんのようなケースは、近年における高齢化、空き家問題の象徴のような事例かもしれません。当事者やその家族から聞くのは、「もう少し近所の方と交流しておけばよかった……」という声。もちろん特別親しくなる必要はありませんが、多少でも意識してコミュニケーションをとっておけば、引っ越しが決まった段階で知らせてもらえるかもしれません。周囲の方との関係性を維持しておくことで、別のルートから情報を得られることも!

また、隣地側の立場になった場合「境界線の立会いを依頼されても、面倒だし応じたくない」と思う方もいるでしょう。しかし現段階では「立ち会いを依頼される側」という方も、いずれ自分たちが「依頼する側」になる可能性も大いにあります。自分たちはもちろん、子や孫の世代が困る可能性を考えれば、立会いを依頼された場合は快く応じる形がよいでしょう。

今回は、土地の「境界立会い」についてお話ししました。いざ「境界立会い」が必要になったときに慌てないよう、近隣の方との”交流“について、今一度考えてみてはいかがでしょうか。
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