耳より情報
2022年01月20日 [耳より情報]
プロの仕事道具<建築・リフォーム工事編>
オーケストライフでは、皆さまのお役に立てるくらしや住まいの耳より情報を定期的に発信していきます。
今回は、戸建てやアパートの建築から、住環境を快適にするためのリフォームまで有限会社 佃建設の佃 竜也が「プロの仕事道具<建築・リフォーム工事編>」と題してお話しします。
昨今のDIYブームにより、いわゆる「日曜大工」の道具にも進化がみられ、幅広い世代の方に親しまれるようになりました。
コロナ禍でのステイホームの影響もあり、特にこの1〜2年は、DIYに関する道具や関連アイテムの売れ行きも好調なようです。
※DIY=「do-it-yourself」(自分自身でやる)の略。専門家に依頼するのではなく、自らの手で、何かを作ったり、修理したり、リノベーションすること。ものづくりに限らず、「自分で何かをやる、行動をおこす」といったことの意味もある。
私もホームセンターなどに出かけた際は、DIYのコーナーに立ち寄り、商品を見ることがあります。その種類の豊富さや手軽さなどに感心し、必要なものや「いいな」と思った物を新たに取り入れることも! ただ、昔からある道具については「ずっと使い続けたい」と思うのです。そこで今回は、そんな気持ちも込めながら、私が先代の父から譲りうけた“3つの道具”をご紹介します。
(写真上から)ノコギリ カンナ ノミ
私が幼い頃、自宅の近くに大工道具の専門店がありました。父はもちろん、周辺で仕事をする職人たちの多くは、そこで一式を揃えていたようです。写真の「ノコギリ」「カンナ」「ノミ」も、そのお店で購入した私の物です。父の代から使っているので、購入した時期は30年以上前になります。このように並べ、改めてじっくり見てみると何だか歴史を感じますね。
「ノコギリ」は、皆さんもご存知の通り、金属の板の端に細かく鋭い波形の刃がついた道具です。
切断するときは、木材を引っかくように削ります。木の目に沿って切断する「縦引き用」と、木の目に対して直角に切断する「横引き用」があり、縦の刃は目が粗く、横の刃は目が細かいのが特徴です。
先ほどの写真には3種類のノコギリがありますが、上が、大きな梁などを切るときに使用するもの。それ以外は、細かい部分を切るときに使用します。(中央が7寸目、下が8寸目)
現在は、横挽き用・縦挽き用と両方の刃がついた「両刃ノコギリ」が主流で、切れ味が悪くなったら、刃を交換する「替刃タイプ」が一般的になっています。
写真のようなノコギリの場合、切れ味が悪くなった際におこなうのが、専門の職人さんに刃を砥いでもらう「目立て」。時間やコストもかかるため、今では、周囲の同業者たちの多くが替刃タイプを使用しています。
私自身も替刃タイプを使ことが多いのですが、譲り受けたノコギリで切るからこその “味わい” もあると思うので、素材や状況に応じて使い分けるようにしています。ただ、これまで目立てを頼んでいた職人さんが、残念ながら引退してしまったんです。2022年、真っ先にやることは、お願いできる方を探すことですね!
次にご紹介する「カンナ」は、木材の表面を滑らかにするためには欠かせない道具です。削ることで凹凸を無くし、平らにしていきます。
実はこのカンナ、私たちの業界では刃をまっすぐ砥げるようになるまでに、7年もの年月がかかると言われています。実際に使いこなせるようになるのは、その次の段階。話を聞いただけでも、ちょっと気が遠くなってしまいますよね(笑)。
この十数年間で、カンナを使う頻度は大幅に減りました。カンナを使う工程は、すでに工場で切断されたものが、納品されてくるからです。使用する場合でも、面取り作業で少し使う程度。効率化を図るため、機械化に頼る部分が増えることは当然とも言えますが、ちょっと寂しい気もします。ちなみにカンナには、削りの技を競い合う大会があるんです。優勝者レベルになると、反対側の景色が透けて見える程の薄さになっているそうですよ!
最後にご紹介する「ノミ」は、木を削ったり掘ったりする際に用いる道具です。見た目としては、学生時代に授業で使った彫刻刀に近いかもしれません。こちらもカンナ同様、使いこなすには、相当の時間が必要です。私も若い頃はかなり苦労した思い出がありますが、そんな時代があったからこそ、道具を手に取り、作業が出来るようになったときの喜びも鮮明に覚えています。
ちなみに、大工の世界で「カンナ7年」「ノミ5年」「砥ぎは一生」という言葉があるんです。それだけ「砥ぎ」が非常に難しく、奥深いものであることを示すような表現ですよね。
また私自身は、たとえ刃をまっすぐ砥げるようになったとしても、「そこがゴールではなく、技術を磨き続けることが大事」という意味も含まれていると思っています。
時代とともに、私たちの業界も大きく変化していきました。分かりやすくいえば、お金をかけて新しい道具を使うことで(機械化も含め)、時間が短縮されて作業効率が各段にアップします。しかし、今回紹介した道具をあえて使うことも! 道具を使って作業をすることにより、非常によい仕上がりになったり、手作業ならではの“風合い”が出たりすることもあるんです。
これからも、父から譲り受けたこれらの道具を大事にしながら、お客さまに快適な住環境をお届けできるよう、力を注いでいきたいと思っています。
今回は、戸建てやアパートの建築から、住環境を快適にするためのリフォームまで有限会社 佃建設の佃 竜也が「プロの仕事道具<建築・リフォーム工事編>」と題してお話しします。
父から譲り受けた“古き良き”仕事道具
昨今のDIYブームにより、いわゆる「日曜大工」の道具にも進化がみられ、幅広い世代の方に親しまれるようになりました。
コロナ禍でのステイホームの影響もあり、特にこの1〜2年は、DIYに関する道具や関連アイテムの売れ行きも好調なようです。
※DIY=「do-it-yourself」(自分自身でやる)の略。専門家に依頼するのではなく、自らの手で、何かを作ったり、修理したり、リノベーションすること。ものづくりに限らず、「自分で何かをやる、行動をおこす」といったことの意味もある。
私もホームセンターなどに出かけた際は、DIYのコーナーに立ち寄り、商品を見ることがあります。その種類の豊富さや手軽さなどに感心し、必要なものや「いいな」と思った物を新たに取り入れることも! ただ、昔からある道具については「ずっと使い続けたい」と思うのです。そこで今回は、そんな気持ちも込めながら、私が先代の父から譲りうけた“3つの道具”をご紹介します。
(写真上から)ノコギリ カンナ ノミ
私が幼い頃、自宅の近くに大工道具の専門店がありました。父はもちろん、周辺で仕事をする職人たちの多くは、そこで一式を揃えていたようです。写真の「ノコギリ」「カンナ」「ノミ」も、そのお店で購入した私の物です。父の代から使っているので、購入した時期は30年以上前になります。このように並べ、改めてじっくり見てみると何だか歴史を感じますね。
刃は「砥(と)ぐ」から「交換」の時代へ
「ノコギリ」は、皆さんもご存知の通り、金属の板の端に細かく鋭い波形の刃がついた道具です。
切断するときは、木材を引っかくように削ります。木の目に沿って切断する「縦引き用」と、木の目に対して直角に切断する「横引き用」があり、縦の刃は目が粗く、横の刃は目が細かいのが特徴です。
先ほどの写真には3種類のノコギリがありますが、上が、大きな梁などを切るときに使用するもの。それ以外は、細かい部分を切るときに使用します。(中央が7寸目、下が8寸目)
現在は、横挽き用・縦挽き用と両方の刃がついた「両刃ノコギリ」が主流で、切れ味が悪くなったら、刃を交換する「替刃タイプ」が一般的になっています。
写真のようなノコギリの場合、切れ味が悪くなった際におこなうのが、専門の職人さんに刃を砥いでもらう「目立て」。時間やコストもかかるため、今では、周囲の同業者たちの多くが替刃タイプを使用しています。
私自身も替刃タイプを使ことが多いのですが、譲り受けたノコギリで切るからこその “味わい” もあると思うので、素材や状況に応じて使い分けるようにしています。ただ、これまで目立てを頼んでいた職人さんが、残念ながら引退してしまったんです。2022年、真っ先にやることは、お願いできる方を探すことですね!
大工になったら「カンナ7年」「ノミ5年」
次にご紹介する「カンナ」は、木材の表面を滑らかにするためには欠かせない道具です。削ることで凹凸を無くし、平らにしていきます。
実はこのカンナ、私たちの業界では刃をまっすぐ砥げるようになるまでに、7年もの年月がかかると言われています。実際に使いこなせるようになるのは、その次の段階。話を聞いただけでも、ちょっと気が遠くなってしまいますよね(笑)。
この十数年間で、カンナを使う頻度は大幅に減りました。カンナを使う工程は、すでに工場で切断されたものが、納品されてくるからです。使用する場合でも、面取り作業で少し使う程度。効率化を図るため、機械化に頼る部分が増えることは当然とも言えますが、ちょっと寂しい気もします。ちなみにカンナには、削りの技を競い合う大会があるんです。優勝者レベルになると、反対側の景色が透けて見える程の薄さになっているそうですよ!
最後にご紹介する「ノミ」は、木を削ったり掘ったりする際に用いる道具です。見た目としては、学生時代に授業で使った彫刻刀に近いかもしれません。こちらもカンナ同様、使いこなすには、相当の時間が必要です。私も若い頃はかなり苦労した思い出がありますが、そんな時代があったからこそ、道具を手に取り、作業が出来るようになったときの喜びも鮮明に覚えています。
ちなみに、大工の世界で「カンナ7年」「ノミ5年」「砥ぎは一生」という言葉があるんです。それだけ「砥ぎ」が非常に難しく、奥深いものであることを示すような表現ですよね。
また私自身は、たとえ刃をまっすぐ砥げるようになったとしても、「そこがゴールではなく、技術を磨き続けることが大事」という意味も含まれていると思っています。
時代とともに、私たちの業界も大きく変化していきました。分かりやすくいえば、お金をかけて新しい道具を使うことで(機械化も含め)、時間が短縮されて作業効率が各段にアップします。しかし、今回紹介した道具をあえて使うことも! 道具を使って作業をすることにより、非常によい仕上がりになったり、手作業ならではの“風合い”が出たりすることもあるんです。
これからも、父から譲り受けたこれらの道具を大事にしながら、お客さまに快適な住環境をお届けできるよう、力を注いでいきたいと思っています。